自然とともに。地域とともに。仲間とともに。

神奈川県・大磯にある「もあな こびとのこや」は認可小規模保育施設で、2015年4月に開園した。大磯駅から徒歩6分、海まで2分の立地。森のようちえんスタイルを取り入れ、園庭はないが地域の恵みを活かして、毎日近くの海や山に散歩に出掛ける。

神奈川県・大磯
認可小規模保育施設もあな こびとのこや
対象年齢:0歳10ヶ月~2歳児
定員:8名

森のようちえんとは
自然体験を主とする幼児教育や子育て支援活動を総称して「森のようちえん」と呼んでいる。森だけでなく、海や川や野山、里山、畑、都市公園など、広義にとらえた自然の中で、子どもが持っている感覚や感性を信じ、見守り、それを引き出すような関わり方を大切にしている。

地域の人に見守られながら自分たちも支えられている

「ようやく充実した保育ができている」

園長の大貫駒さんは少し日焼けした顔で話をしてくれた。

「開園から2年経過し、ようやく土台が築けつつあること。核となるスタッフが集まり、みんなでこの保育環境をつくれることが最高の喜び」とその理由を語ってくれた。

散歩に出かけようと玄関を一歩でると、園舎前にある床屋のご夫婦が「いってらっしゃい」と言って駆け寄ってきた。こちらのご夫婦、帰園する時間も店先に顔を出して、毎日子どもたちにあいさつをしてくれるのだそう。この日はみかんをお裾分けしてもらい、子どもたちは嬉しそうにポケットの中へ入れた。

散歩先の王城山入り口に着くと、山の管理者の方が子どもたちを待っていた。散歩中に危険がないようにと、危険物を拾いながら頂上まで一緒に歩く。そんな地域の人に見守られながらの保育が日常だ。

「子どもたちと町の中を歩けば、つぼ焼きいも屋のおいも先生や、漁師さん、ゴミ収集車のおじさんなど、たくさん声をかけてくれて、いろいろなことを教えてくれるんです。地域の人に見守られながら育つ子どもを通して、自分も支えられているという実感があります。そしてそれをシェアできる仲間たちの存在が、充実した保育に繋がっています」

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自然が子どもの学び舎

子どもたちに目を向けると、急な山道をぐんぐんと登り、ときに木の株をイスがわりに休み、下りの山道は自然の滑り台に……。自然の中であらゆる遊びを生み出していく。山道に横たわる大木も躊躇することなく、するっと登っていく。そこには、日常から保育者による見守りがある中で、関心をもったものをとことん探求し、自然との触れ合いを知っている子どもたちの姿があった。

「遊具など何もない公園があるのですが、なぜか子どもたちはその場所が大好き。素足になって、足を砂利に埋めて遊んでいます。その後は寝転がり、おなかに砂利を乗せ砂利蒸し風呂ごっこがはじまります」

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働く環境で一番大事なことは人と人との関係性

散歩から帰ると昼食準備から昼寝までの間、スタッフ同士の確認事項は最小限しかしていない。8人の子どもの着替え、トイレ、昼食準備、食事補助、食器片付け、お布団準備、寝かしつけを3人のスタッフで小気味よくこなしていく。

「通常は、リーダー、サブリーダー、雑務という形で、その日の担当をあらかじめ決める園も多いとは思いますが、ここではあえて決めずにいます。そうすることでスタッフが気持ち良く目の前の子どもたちに向き合えると感じています。小規模保育だからこそできることかもしれません」

お互いがお互いをサポートして、子どもたちの心地良い居場所をスタッフ全員で作り上げていく感じが伝わってくる。お互いへの信頼感があるからこそ、スムーズな連携が生み出されているのだろう。

「保育園で働く環境は、人との繋がり、人と人との関係性が一番重要だと思います。子どもたちを寝かしつけたあと、スタッフの昼食・休憩タイムなのですが、自然とお弁当を持ち寄って車座になって食べているんです。もちろん強制ではないので、郵便局や銀行に行くこともあります。でも、みんなその日にあった出来事や感じたことを共有したい思いがあります」

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森のようちえんという保育方針に共感した保育者の仲間が集まり、大貫さんが大人のありのままを受け入れて、フラットな関係づくりに注力している。それもまたここで育つ子どもたちのより良い環境のためになるからだ。

「子どもたちの今日の姿を見て仲間と語れること、そこにとてつもない中毒性があるんです。だから保育士は辞められません。地域の人と、ここで働くスタッフと、子どもたちとともに成長していけたらなと思います」

こびとのこやの3年目が始まった。

 

 認可小規模保育施設もあな こびとのこや
大磯町で『働く、育てる、食べる』がテーマのソーシャルビル「OISO1668」の1階にあり、2階はコワーキングスペース、3階はオーガニックカフェ「WiLLD」。園の給食はオーガニックカフェ「WiLLD」に委託、地域の有機野菜をふんだんに使ったメニューを提供している。
住所:中郡大磯町大磯1668 1F
アクセス:JR東海道線大磯駅下車 徒歩6分
ホームページ:http://kobitonokoya.com/
スタッフブログ:http://kobitonokoya.jugem.jp/?cid=2

オリンパスデジタルカメラ

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運営法人

NPO法人もあなキッズ自然楽校
横浜市で横浜保育室の「もあな保育園」「めーぷる保育園」と認可外保育施設「めーぷるキッズ」、横浜市放課後児童クラブ「もあなのいえ」を運営。いずれも「森のようちえん」を基本理念とし、緑地や公園を利用して自然体験をベースとした保育をおこなっている。約2ヶ月に1回、リクルーティングセッション(就職ガイダンス)を行っており、働く前に実際に保育体験や保育の様子を見ることができる。
住所:〒224–0003 横浜市都筑区中川中央1-38-11 ヴィラノルド1F
ホームページ:http://moanakids.org/
Facebook:https://www.facebook.com/moanakids/

ビジョン・ミッション・保育理念

ビジョン
未来を創るのは子どもたちだ

ミッション
大人が今の世界を創っているように、未来の世界を創っていくのは子どもたちです。
子どもたちがどう育つかによって、未来は良くも悪くもなる可能があります。そう考えると、「子育ては未来を創ることに直接繋がっている」といえます。子ども達が将来幸せな未来を創れるよう、どう育てるか、それは大人の責任です。私たちは、子ども達をできる限り自然の中に置くことが、子どもたちが自ら「生きる力」ょ知識・経験・コミュニケーション力)を身につける最良の方法と考えています。

子どもたちが思いっきり遊べる環境を保証し、子どもたちの自主性を最大限に尊重し、時に子どもたちの成長に繋がる機会を与えることで「生きる力」を身につけ、幸せな未来の源となる子どもたちを育てることを目指しています。

保育理念
1.自然を共に分かちあおう!
2.子どもも親も先生もみんな一緒に育ちましょう!
3.とことん遊びつくそう!

 

 

(2017/4/19 テキスト・写真:柴山和代、編集:栗山)