今回レポートするのは「保育語りBAR」。男性保育士が中心となってつくるまなび場です。「保育」という語感からはほど遠いように思える「BAR」というキーワードを掛け合わせたこの会。ちょっとしたギャップ、魅惑的なネーミングに心をひかれるひとも多いはず。
そこではどんな世界が繰り広げられていたのか──。
2018年2月、2週に渡って開催された「保育語りBAR」へ参加してきました。さっそくレポートをお届けします!
「だいそれたことをやりたいわけではない」
保育語りBARの代表をつとめる石上雄一朗さんが、第一声で語った言葉です。
「僕たちのこと、僕たちがなぜ、この活動をはじめたのか。今まで外部に話をしたことがなったのですが、しっかりことばにして伝えることも経験だと思いました」今回の開催テーマにいたった理由を教えてくれました。
今回のテーマは「ボクらのルーツ・ボクらのミライ」。この「保育語りBAR」をたちあげた思いとともに、ルーツをたどり、知る会。会場は小平市にある素敵な保育園。この園の見学も兼ねて開催されました。参加者は20名ほど。保育者や幼稚園教諭、子どもに関わる仕事をしている方たちが参加していました。

前に進むきっかけは、ひととの出会い
「保育語りBAR」としては2016年から運営。前身は「語らない会」というグループでした。
「語らない会」のはじまりは、あるひとたちとの出会いから。そのひとりが保育の日常で起こる小さな疑問や、子どもとの対話から、大人の当たり前が当たり前ではないことに、モヤモヤが積み重なったそう。
「なんで棚の上にのぼっちゃいけないの?」
「なんでブランコは立ち乗りをしちゃいけないの?」
そのことを石上さんに打ち明けたことがきっかけとなり、みんなでモヤモヤを掘り下げる「語らない会」がたちあがりました。
ときに迷走しながらも会を続けて行く中で、さらに、ひととの出会いが訪れます。のちに「保育語りBAR」の運営メンバーとなる、男性保育士であり同年代の田中岳さんと神谷潤さんとの出会いも、この「語らない会」でした。
石上さんはもっといろんなひとと出会いたいという思いが膨らみ、「語らない会」から「保育語りBAR」へと発展させます。石上さんが代表となり、田中さん、神谷さんで運営していくことになりました。名称の由来は、BARのように多様なひとが出入りする場になれたらということ。ときにお酒を飲みながらこの場で出会ったひととじっくり話がしたいという思いからだと教えてくれました。

「保育語りBAR」の魅力は保育ど真ん中ではないこと
2018年4月時点ですでに16回、場づくりを重ねてきました。園見学や親睦を深めるBBQ、LGBTなど保育のことに少しは関連があるけど、保育だけではない、多岐に渡るテーマで開催してきました。そのため、毎回参加者の年齢層も違えば、「はじめまして」のひとも多いといいます。

森のようちえピッコロ
通常の幼稚園、保育園の教育に疑問を持つ保育士が自分の子どもを幼稚園、保育園に預けず、自分の手で育てたいという保護者の意向にそって設立した団体。
関わる大人が全員で、子どもたちがよりよく育つ場を創ることが原則で、通常の幼稚園、保育園とは違った形の幼児教育施設。
幼児教育の問題点を解決し、子どもの創造性、自主性を育む保育。関わる大人は、自分の子どもだけがよければよいということではなく、子どもの育ちについて広い視野を持ちながら、ピッコロの運営がよりよくなるように運営に参加する保育士と保護者による共同運営。森のようちえんピッコロホームページ
http://mori-piccolo.jp/
代表の石上さんは「保育語りBAR」の特徴をこう表現しました。
隔たりのない団体──。
「分野がまったく違う団体や、ほかの保育士関連の団体から、何か一緒にやっていこうという多くのお声がけがあり、そこが特徴なんじゃないかなと」
「立場など関係なく、ひとがひととして対話できる会であり、協働、双方向、多様性、広さをキーワードに、なおかつワクワクを忘れないのが、保育語りBARの良いところだと思います」
そして、この会に参加したひとが、小さくてもアクションを起こしてくれたら嬉しいし、自分たちも団体をつくってみようという動きがあれば全力で応援していくと話をしてくれました。
小さくても身近なことからはじめてみよう
運営メンバーのひとり、田中さんは「保育語りBAR」の活動に関わることになった理由とこれからのことを話してくれました。
「前身の“語らない会”では、参加者みなさんがちゃんとモヤモヤを持っていたんです。志が高すぎず、自分たちが抱えている悩みの中で模索している姿がありました。いきなり“保育を変えようぜ”という感じではなく、身近で小さなことからはじめてみようという、みなさんの姿に共感しました」
「これというものがとくにないのがこの会の良いところ。参加したひとが“これやりたい”と思えば、いつでもやることができる環境です。参加者が起案者。講師を呼んだとしても、主体は参加者に変りありません。本音と建前の、本音の部分をぶっちゃけて、くだらないことも話をしていきたいです」

他の団体とのかかわりで生まれる化学反応を
神谷さんは「保育語りBAR」での自分の役割について語ってくれました。
「いま、保育の世界では“もっと外に目を向けてみようと”と現場の保育士自身が主体となって、対話する場をつくり、多くの団体が活動しています」
「それぞれの団体は、扱うテーマやベクトルは少しずつ違うのですが、だからこそ面白い!2018年は他の団体とのかかわりで生まれる化学反応を楽しみたいと思っています。幼児教育ラボや保育をテーマに世界を旅した久保田夫妻など、コラボ企画を考案中です」
「今の時代、子どもに関わることが負担感になっていると感じています。その現状を打破していきたいです。この会を通して何ができるかを探っていきたいと思います」

「保育語りBAR」に参加してみて
保育ど真ん中ではないテーマも扱うからこそ、多様なひとが参加し、まなびに訪れる「保育語りBAR」。さらには、この場をつくっている“ひと”、参加する“ひと”こそが改めて大切なんだと実感しました。
“こうでなければいけない”でなく、“こんなやり方があるのか” “自分もこんなことができるかもしれない”。そんな空気感をつくっているのは紛れもなく、石上さん、田中さん、神谷さんを中心に、ここに参加しているひとたちでした。
小さな違和感を大事にしている多様なひととの出会いがあり、解消してもしなくても、違和感に気づいたことが大事だと教えてくれる場が「保育語りBAR」の第1部。
そして、まなびのあとには必ず第2部として(またの名を2次会)、お酒を飲み交わしながらの懇親会を開催しています。「保育語りBAR」の真髄はこの時間かもしれません。果たしてギャップがあるのかないのか──その様子を詳しく知りたいという方は、実際に足を運んで確かめてみてください。楽しい世界が待っているはずです。
今後の「保育語りBAR」の開催について
次回の開催テーマは教育を受けることは義務なの?権利なの?「サドベリースクール」のお話です。興味を持たれた方は、是非足を運んでみてください。第2部の懇親会も予定しています。
日時
2018年5月27日(日)10:00~13:00
場所
西武新宿線花小金井駅のとある保育園をお借りする予定です。
参加費
¥1000円(運営費等)
お申し込み方法
1.Facebookイベントページの参加ボタンをポチッと押す
https://www.facebook.com/events/312427375948606/
2.参加希望のメールを送る
hoiku.katari.bar@gmail.com
このツーステップをお願いいたします。
「保育語りBAR」
Facebookページ:https://www.facebook.com/hoikukataribar/
(2017年4月16日 取材・文:柴山和代)